ザクセン州都ドレスデン。中世から19世紀にかけて繁栄を謳歌し、芸術の都、バロックの都などとも称されたたいへん優雅な趣の残る町。
大戦の無差別爆撃により壊滅するも、現在では大部分が復興。エルベ河畔の旧市街の風景がたいへん美しく、エルベのフィレンツェ、エルベの真珠などとも言われる。
ドレスデンの文書上の登場は1206年。その後は、エルツ山地の銀採掘などで重要ルートとされたドレスデンだが、長い間地方都市に留まっていた。本格的な繁栄が始まったのは、15世紀後半に大公の居城が置かれた後で、その後1618年から始まる30年戦争までの100年間に渡って大きく繁栄。1618年以降は戦争の影響により一時衰退するが、1694年にはかのアウグスト強王が選帝公となり、18世紀半ばまでの「アウグストゥス時代」と呼ばれる大繁栄の時代を迎え、華麗なバロック王都としての地位を築いた。しかし、その町並みは大戦の大爆撃で壊滅。その爪痕は21世紀になった現在でも残るものの、以前の華麗な姿を復興させ、ドイツ屈指の名都市として愛されている。
Data
帰属連邦州 | ザクセン州 |
人口 | 512,234人(2008年12月) |
河川 | エルベ川 |
お土産 | マイセン磁器 バウムクーヘン |
縁の偉人 | ウェーバー(音楽家) |
おすすめ度 | ☆☆☆☆☆ |
キャッチフレーズ | エルベの真珠 |
公式サイト | http://www.dresden.de/ |
Map
かつての東ドイツ領域にあり、チェコとの国境とは50キロ程度、ホーランドとの国境にも100キロほどの場所に位置する。
南部にはチェコとの国境をなすエルツ山地、南東部には市街を流れるエルベ川が織り成すエルベ渓谷などもあり、自然も豊かな町。
Access
■ ベルリンからECで約2時間15分
■ ライプツィヒからREで約1時間40分
■ ケムニッツからREやIREで約1時間
■ プラハへはECで約2時間(乗換なし)
ザクセンチケットを使用すれば、ザクセン州/テューリンゲン州/ザクセン・アンハルト州内について、週末と平日9時以降、ICE/IC以外であれば5人まで有効で28ユーロで乗り放題ですので大変お得です!1人でも19ユーロです。また、EC(ユーロシティ)を利用すると、乗換なしでチェコのプラハへも行けます。
バロック音楽が鳴り響く、ザクセン王都ドレスデン。
バッハの時代から、ライプツィヒとともに、音楽の都としての輝きを放った町。
エルベ河畔のひとつの都は、時のアウグスト強王によって、華麗な宮廷音楽の踊る都へと様変わりした。
美しいフォルム、白亜のフラウエン教会。ザクセン最大の大聖堂、ドイツ・バロック宮殿の最高峰であるツヴィンガー宮殿、そしてエルベを見渡す巨大なブリュールのテラス。
青空にトランペットが鳴り響く王国の都・・・まさにバロックの最高傑作が出来上がったのが、18世紀半ばのことだった。
それからまもなく、町に響く旋律は、貴族色の強いバロック音楽から、古典音楽へと時代の転換期を迎えていた。
ゲーテやシラーによって古典主義が確立され、ヨーロッパ全体に古典古代回顧主義の風潮が強まる中、ここバロックの隆盛を極めたドレスデンにさえも、音楽の変化が現れ始めたのだった。
「我々の時代ももう終わりか・・・」
都に居座る巨大建造物たちの嘆きの声が聞こえてくるよう・・・。
その変化を目の当たりにしたとき、フラウエン教会は・・・ツヴィンガー宮殿は・・・大聖堂は何を思ったことだろう。
ドレスデン王宮の君主の行列を眺めて、僕にはこんな想いが過ぎった。
それにしても見事な町並み・・・というより、エルベ河畔一帯が巨大な宮殿の中にあるかのように、他とは全く空気が違う。
いやがおうにも、18世紀の全盛期を想う。ふと、その角から、豪華な服やドレスを纏った公爵公女が現れても不思議ではない。
でも、この都は、そんな華やかな時代ばかりを見てきたわけではないのだ。
モザイクがかったフラウエン教会を見ればわかる。
1945年、終戦も間近に迫ったある日、ドレスデンは地獄へと化した。
連合軍の無差別爆撃がバロックの都を襲い、数万という命とともに、200年の時が吸い込まれた街並みが消滅した。
空に響くのは、トランペットの音色でもなく、バロック音楽でもなく、人々の絶望と悲痛の叫びだった。
人の命ほど尊いものはない。でも、あの時代から、憧れの華麗な都ドレスデンの象徴だった重鎮達・・・フラウエン教会、ツヴィンガー宮殿たちの死は、ドレスデンの宮廷文化に完全な終焉を告げたのだった。
最期に彼らはどんな叫びを残したのだろう。
もしかしたら、バロック期が終わった時に、自分達の死は覚悟していたのだろうか・・・。
このような終わりでなかったとしても、いずれ新しい時代の波にのまれ、消えてゆく存在だと感じていたのだろうか・・・。
21世紀。僕はいまここで、確かにドレスデン宮廷文化の町並みを目にしている。
再び命を吹き込まれたバロックの建造物たち。
変化する人間社会の中、自分たちが呼び戻されたこと・・・彼らは何を思う。
時代は音楽の流れを変えた。バロック音楽から古典音楽、ロマン派音楽、近代音楽・・・その流れを目の当たりにして彼らはちょっと戸惑ったかもしれない。
2009年、建設中の橋が町の景観を損ねるとして、世界遺産から抹消されたドレスデン。幾つもの時の荒波にのまれ続けてきた彼らにも、これにはちょっと危機感をもっているかもしれない。
だけど、彼らには心強いメッセージがある。
時代は変わろうとも、美しいものは生き続ける
一時は忘れ去られたバッハのバロック音楽だって、再びこの世で輝きを放った。
この先の未来にどんな文化が訪れようとも、きっと彼らは生き続けるだろう。
美しさを美しいと感じられる人の心があり続ける限り。
-町の小窓たち- |
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今回はちょっと堅苦しくなってしまいましたが、ドレスデンの町並みは、私たちのこころに投げかけてくれるテーマがたくさんあると思います。でも、それらに共通するのはここに綴ったようなこともあるのかなって思いました。
人間社会に翻弄され続けてきたドレスデンを見て、皆様も何かを感じてきてください。ただ「美しい」と感じるのも、それは自分の心が動いている証拠。そのような人がたくさん居続ける限り、ドレスデンはあり続けると思います。
何といってもエルベ川沿いの地区は、かつての王都の繁栄を偲ばせるような凄みがあります。絢爛豪華な堂々たる建物が建ち並び、圧倒的な都だったことがはっきりと見て取れますよ。壁のように連なる中世遺跡のなかに浸ってみてください。
フラウエン教会 | 18世紀半ばに建てられた、外観がたいへん優美な教会で、ドレスデンはもちろん、世界有数の美しい教会です。第二次世界大戦の際の無差別爆撃によって崩壊し、現在見られるものは、2005年に世界中の寄付により再建されたものです。戦後長らく平和の象徴として瓦礫が残されていましたが、その瓦礫を可能な限り使用する形で建てられた為、黒とクリーム色が混ざったモザイクのような外観をしていることも特徴です。 |
君主の行列 | 歴代ザクセン王が住んだ、ドレスデン城の北側の壁あり、王をはじめとした93人がマイセンタイルに描かれたものです。城壁に沿って100メートル程あり、奇跡的に爆撃を免れた為、作られた当時のオリジナルのものとなっている点でもたいへん貴重です。 |
ドレスデン城 | 12世紀に建てられたもので、歴代ザクセン王の居城です。内部も絢爛豪華、マイセン製の君主の行列など、繁栄を謳歌した王国の財がみてとれる城となっています。また、高さ101メートルのハウスマン塔からは、ドレスデン市街が一望できます。 |
ドレスデン大聖堂 | ドレスデン城の北側にあるザクセン一の大規模な教会で、1738〜1755年にかけて建てられました。歴代ザクセン王の棺が地下に納められており、有名なアウグスト強王については心臓だけが特殊な容器に入っています。この建造物も、エルベ越しの美しい眺望にインパクトを与えています。 |
ゼンパー・オーパー | 19世紀の偉大な劇場建築家ゼンパーによって建てられた歌劇場です。ドイツ音楽史には欠くことのできない有名なオペラハウスで、名立たる有名な音楽家達もここが活躍のひとつの場となっています。ドイツはもちろん、世界的にも有名です。 |
ツヴィンガー宮殿 | ザクセン王国の最盛期を象徴する大宮殿で、1710〜1738年にかけてアウグスト強王によって建てられました。マイセン陶磁器のコレクション館、武器庫、数学・物理博物館、ギャラリーなど、アウグスト強王のコレクションをはじめとするザクセン王国の遺産が詰め込まれています。外観も圧巻の豪華さをもち、ドイツ・バロック宮殿の最高傑作との呼び声も高い建造物です。 |
ブリュールのテラス | エルベ河畔に500m程続く旧市街側の大きなテラスで、いかにも王国の優雅さを物語る場所です。最盛期を見たゲーテが、「ヨーロッパのバルコニー」と呼んだそうですが、その面影を感じさせる素晴らしい観光スポットです。 |
旧市街やその周辺には、これ以外の見所もたくさんあります。でも、近郊のエルベ渓谷などにも行ってみて下さい。近郊にはピルニッツ宮殿などの見所も多く、なによりザクセン・スイスでは大自然の景勝を楽しむことができます。人が創った都と、自然が創った景観の両方を味わえますよ。
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