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Ulm-ウルム-

 バーデン=ヴュルテンベルク州とバイエルン州の境にあり、あのドナウ河の流れに沿って息づく街。日本での知名度はあまりないものの、162mという高さを誇る世界最高峰の大聖堂があり、天才物理学者アルバート・アインシュタインの生まれた町でもある。そして、街に残る市壁は中世からのこの街の面影を残し、市街地の一部では現在でも水の流れと共に歩んできた歴史の刻まれた情景が残されている。この地区は、いわゆる水の都ウルムとしての一面を今に残している。水と大聖堂とアインシュタインの町、ウルム。訪れるものを飽きさせない数々の見所と、思い出に形を変えるたくさんの魅力に溢れている。

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Ulmの簡単な歴史の紹介-History-

ウルム大聖堂

 12世紀に帝国都市の特権を認められ、1つの都市として大きな歩を進める。その後14〜15世紀にかけ、シュヴァーベン都市同盟の盟主としての地位を確立。同時期にはこの町のシンボル、大聖堂の建設が始まる。

 18世紀になると、ドナウ対岸のノイウルムはバイエルン領、ウルムはヴュルテンベルク領と分かれ、両市に跨った強大な城壁が築かれるなど、ドイツ連邦としての軍事的一端を担うことになる。

 その後の第二次世界大戦では、街の80%が破壊されるという壊滅的被害を受けたが、現在では戦災を免れた大聖堂を中心として、中世の面影を随所に残した街として復興を果たしている。

  •  Data

    Ulmのデータ

    帰属連邦州バーデン=ヴュルテンベルク州
    河川ドナウ河
    人口120,625人(2005年)
    郵便番号89001-89081
    有名なお祭りウルム民俗祭りと宣誓週間(7月)
    クリスマスマーケット(12月)
    有名な出身者物理学者アインシュタイン
    Myおすすめ度☆☆☆☆☆
    キャッチフレーズ募集中です・・・
    公式サイトwww.ulm.de
  •   Map

    Ulmの地理

    ウルムの位置

    南ドイツの左右を分ける、バーデン=ヴュルテンベルク州とバイエルン州の境に位置する。ドイツ最南西部に端を発したドナウ河は、上流都市ウルムを通り、ドナウヴェルト、レーゲンスブルク、そしてウィーンへと流れていく。

    そして、大聖堂からは南方にドイツアルプスが望める。GoogleMapを見る

  • Access

    Ulmへのアクセス

    シュトゥットガルトIRE/RE/RBで1時間〜1時間半

    ミュンヘンからREで約2時間

    フランクフルトからIC/ICEで約2時間半

    アウクスブルクからRE/RBで約1時間


    ※IRE/RE/RBは普通電車です。バーデン=ヴュルテンベルク州内であれば、週末と平日9時以降は、州内1日券が使えます。ICやICE以外は1人なら19ユーロで乗り放題ですのでお得です!
    また、ミュンヘンから向かうのであればウルム手前のノイ・ウルム駅までならバイエルン州チケットが使えます。1人旅でも往復20ユーロなので、断然お得ですよ!

ここからはUlm-ウルム- 旅行記-Reisebeschreibung-
中央駅前から大聖堂を見る

徒然旅行記のコーナー -???の連続旅行-

 「何でだろう・・・?」

 ウルムの地を初めて旅したときの感想。本当に疑問で仕方なかった。日本であまり知られていないことが。そうして思った。「日本で知られていないドイツの街を、もっとたくさんの方に知ってもらいたい!」と。それが、僕自身のドイツワーキングホリデーの1つの目的となった。ドイツ中を旅して回りし、営業マンのように観光局などを訪ね、まだ陽の目を見ないたくさんの街を掘り起こしていく。この目標が出来、活動し、僕のドイツ留学は初めて意味を成した。そのきっかけを与えてくれた街が、このウルムだった。

 この街を初めて訪れたのは、僕がドイツに留学をしてまだ1ヶ月半程度の頃。ドイツ語を学習するのが精一杯で、まだワーホリの確固たる目的も見据えることができていない時期。そんな時期に出逢ったウルムが、僕のその後の留学生活に大きな動機付けをもたらすことになった。

 ガイドブックでもあまり大きく取り上げられることのないウルム。この街を知ることになったきっかけは、ホストファミリーの親戚家族を、シュトゥットガルトまで1人で迎えに行ったときのことだった。

 ミュンヘンからREに乗り2時間が経過し、車窓からの眺めにもさすがに飽きてウトウトとしていた頃。突如として、異様なものが目に飛び込んできた。延々と続いてきた緩やかな大地、途切れることの無い自然の大地が無限にすら感じ始めていた時に、その大地から天に向かって伸びる巨大な建造物。教会だ。前知識もない状態で世界一高い大聖堂を目にする・・・その衝撃はあまりにも大きかった。まだ遠くにあるはずなのに、あの高さは普通じゃないというのはすぐに分かった。一瞬、ケルン大聖堂?なんてことも頭を過ぎったが、そんなはずはない。すぐさまリュックのガイドに手を伸ばそうとした時に、車内のアナウンスが鳴った。

 「ウルム」という響きが耳に残った。

ウルム大聖堂から街を見下ろす彫刻

ウルム大聖堂


 あの衝撃の出逢いから1週間。初めてウルムの町に立った。中央駅前から伸びる一直線の通り、その先にはあの大聖堂がある。駅を降りた時点で目が釘付けになる。後に訪れることになるケルン大聖堂には及ばないものの、目の前に立つとやっぱり迫力が違う。既に訪れていたレーゲンスブルクの大聖堂も迫力があったが、この大聖堂の高さはやっぱり別格。しばらくあんぐりと口を開けながら見上げていた。そして尖塔の先の方に目をやり、思った。「今からあそこまで登るんだ!」


 じわっと汗をかいた体に、ここを吹き抜ける風は冷たすぎる。ひんやりとした石造りの階段をひたすら登り、その通路の狭さに降りてくる観光客と譲り合い、一緒に登る友達2人とお互いを気遣いながらやっとのことで風が吹きすさぶこの場にたどり着いた。地上ではあれだけ大きな胴体を誇っていた大聖堂、ところがここでは見回しても数メートル。「今あの尖塔の先の方にいるんだ」っていう実感と、今自分を守ってくれている、500年以上かけて建造されたという石造りの舞台が崩れやしないか、なんて恐ろしい気分にもなる。


 ここまで来る途中に、聖堂の壁から外に身を乗り出している彫刻を見かけた。何百年もあんな所で街を見下ろす気分はどのようなものなんだろう・・・。誇らしげにも見えるざらざらしたその灰色の顔が、びびって引きつっているようにも見えた。

水の街の面影を残す地区

観光客のいない見所の数々


 尖塔から眺める景色、冬の訪れた緑のない大地は寂しそうに見える。ドイツの町並みによくある赤茶色の屋根がこの街にもズラリと並び、街に寄り添うようにしてドナウの流れが地平線に向かって延びている。ここから降りれば、昼食をとって街を少し散策して終わりかなって、旅のメインが終わった感じで少し寂しくなった。

 降りきった時はもうひざがガクガク。しばらく休もう。神聖な雰囲気に満ちた大聖堂の内部は、尖塔で味わった冷たさとはまた違った雰囲気の冷気が漂っている。ここで目に付いたのは、十字架に架けられたキリストを後方からじっと見つめるように動かない天使の像。両手の羽を頭の上にかざし、じっと前方を見つめている。珍しい像だなぁと思いながら、何気なくその天使を後ろから見てみた。

 一瞬背筋が凍りつくような感覚がした。このページのトップで貼っている画像がそれ。おおよそ天使とは思えない、真逆のものにすら見える、恐ろしい存在にさえ感じた。教会内部にそんな存在があるわけはないと思いつつ、天使から姿を変えたこの像に、何か隠された意味があるような気がした。(結局深い意味があるのかどうかは分かりませんでしたが、皆さんもウルム大聖堂を訪れたときに見てみてください。)

 意外なところで印象に深く残るものを目にし、次なる観光スポへと巡る。

 続いて訪れたのが、大聖堂から10分ほどの所にあるアインシュタインの噴水。誰もが知っている、天才物理学者アインシュタイン。理系出身の僕にとって、アインシュタインの功績というものは学生時代に嫌というほど学習した。アインシュタインの存在がそれ以降の物理学、社会に与えた影響は計り知れず、現在でも彼の残した功績から科学が発展しているといっても過言ではない。そんな有史を代表する重要人物のモニュメントがこれ?!住宅街の一角に、忘れ去られたようにポツンと置かれている。観光客は誰もいない。

 ウルムにはこれ以外にもアインシュタイン縁のモニュメントが幾つか存在するが、何故かアインシュタインの博物館、生家などは存在しない。生家は戦災で焼け落ちてしまったというが、これだけの偉人を称えるものとしてはとても釣り合わないようなものばかり。比較の対象とするのは適切ではないかもしれないが、ある意味大聖堂と肩を並べる観光スポットとしてアインシュタインを取り上げてもおかしくはないと思うのだが・・・。

 そんな腑に落ちない思いを抱きながら、街を散策する。至る所に市壁の跡が残されているが、これも特に取り上げられることなくほったらかしにされている。そして、有名なドナウ河、いくらまだ上流でドナウのイメージとは似つかない姿だとは言え、やはりこれを取り上げるようなものもない。ともすれば、どこにでもあるちょっと大きな川にしか見られない。そして、観光ガイドで紹介されているメッツガー塔にも行ってみる。やはりこれも住宅街に埋もれた単なる塔にしか見えない。途中で通った巨大な市壁の上に築かれた遊歩道、すごく雰囲気のある所だけど、やはり観光客は全くいない。何で?何で?の連続。ここまで観光要素の詰まった街なのに、どうして全部ほったらかしにされているのか、不思議で不思議で仕方がなかった。

街を囲む市壁とドナウ河

ウルムはもっと有名になる


 「ウルムをもっと有名にしたい!」初めてのウルム観光旅行を終えた感想。正直にそう思った。その後に幾度となく訪れ、漁師地区の風情ある町並みや、特徴的な市庁舎など、多くの観光客の集まる風景を目にすることは出来たが、やはりそれだけでは物足りなかった。あれだけ有名になりうる要素があるにも関わらず、見所という見所はほったらかし。町の行政における事情があるのかどうかはわからないが、ただ素直に「もったいない」と感じた。言ってみれば、大聖堂がなくても観光都市となる要素は十分に揃っているのだ。こんな素晴らしい観光地があまり知られることなく埋もれていることに、本当にもどかしい気持ちでいっぱいになった。

 そうして、僕のワーホリ生活は観光促進に関する活動が中心となっていくのだが、ワーホリを終えてみて、その目標というものは残念ながら達成しきれなかった。ワーホリ生活自体はたいへん充実したものとなり、心の中の達成感というものは大きく得ることが出来た。でも、実際にウルムをはじめとしたドイツの多くの観光地を、直接大きく広めることができたかというと、できていない。せいぜい、今ではこのようにしてこの場で綴る事で、その町の魅力を自分なりに伝えることくらいしかできていない。

 でも、ウルムは、僕自身にドイツ留学の意味を教えてくれた大きな存在。そして、最後にお伝えしたいのは、「ウルムはもっと有名になる」ということ。この町が今後どのように広まっていくか、注目していきたい。


Ulm-ウルム- 旅行記-Reisebeschreibung- おわり

-町の小窓たち-

駅前通りとウルム大聖堂 クリスマス前の大聖堂広場 ウルム大聖堂正面の彫刻
荘厳なる大聖堂内部 ドイツ最高峰教会からのドナウの薄暮 アインシュタインの奇妙な像 ノイウルムからウルムを眺めて
市壁の上を歩く 漁師と皮なめし職人街 大聖堂展望台からの町並み ウルムクリスマスマーケット

  詳細はフリー写真de小旅行Terminal〜ウルム〜でご紹介中です。

-旅行記後記-

傾いたホテル、シーフェス・ハウス

 今回は、自分のワーホリ体験記みたいになってしまいました・・・。旅行記として期待されていた方には、こんな誰とも知らぬ管理者の人生の一部なんてどうでもいいやいって気持ちにさせてしまったかもしれません。ごめんなさい。

 ただ、私としてはウルムの埋もれた数々の魅力を、これから訪れる方がひとつひとつ宝探しをするように発見していっていただければ、という思いで書きました。きっと全てを綴るより、行く前に期待するのは大聖堂程度にしておいた方がいいのかなって。

 ウルムは、町としてしっかりとした観光整備を行っているようではありません。ですから、"中途半端"な印象を受けるという方も多いと思います。でも、華やかな観光地だけでなく、ドイツには宝探しのできる隠れた名観光地もあります。その代表格がこのウルムだと言っていいと思います(ドイツ人からすれば有名な観光地なんですけどね)。きっと楽しい旅行になるはずです!

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-町の見所-

 ウルムのシンボルといえば、何といっても世界最高峰の大聖堂・・・これは間違いないですが、他のところにも目を向けてみてください。水の流れの中にある皮なめし職人街の町並み、ドナウの流れ、強固な市壁に造られた街、アインシュタインの生誕地、カラフルな市庁舎。大聖堂がなくとも多くの魅力があります。世界一の高さを誇る教会は、「数あるウルムの観光スポットの1つ」という表現があっているかもしれません。

ウルム大聖堂大きさこそケルン大聖堂に次ぐドイツ2番目ですが、高さは162mで世界一を誇ります。この大聖堂、建造期間はなんと500年以上も要し、1377〜1890年までかかりました。また、教会内部には7680本ものパイプをもつオルガンもあり、定期的にコンサートも開かれています。そして、この大聖堂では768段の階段があり、高さ141mの展望まで登ることが出来ます。足がすくむような場所もありますが、3ユーロ程度なので是非是非挑戦してみましょう!
市庁舎1370年に建てられたもので、全面カラフルなフレスコ画が描かれています。また、正面壁には天文時計も見ることが出来ます。漁師と皮なめし職人街の近くにあります。
ウルム博物館1924年に創設された博物館で、市庁舎のすぐ東にあります。この地方、オーバーシュヴァーベン地方の中世美術や考古学出土品、あるいはピカソの初期作品など、膨大な収蔵品が展示されています。
メッツガー塔14世紀に建てられた塔で、「肉屋の塔」という意味です。すぐ前には市壁があり、中世ウルムの雰囲気を残しています。
漁師と皮なめし職人街かつては漁師が住んでいた水の街ウルムの面影を色濃く残す旧市街の一角です。立ち並ぶ木組みの家々の間を縫って川が流れます。非常に風情の感じられる町並みです。また、1つのポイントとして、川の中の様々なところに鳥の目印が立っているところに注目してみましょう。
パン文化博物館まさにパンの博物館。8000年に渡るパンの歴史から、パン作りの道具、原料、作り方など、パンに関するあらゆる情報や資料があります。
シーフェス・ハウス漁師と皮なめし職人街にある、1443年建造の木組みの建物です。ホテルとして使われており、その名の由来となっている建物の"傾き"のせいで、脇を流れる川に崩れ落ちそうな状態となっており、今では人気観光スポットの1つになっています。ホテルとして宿泊したい場合は、早めに予約をとるようにしましょう。
アインシュタインの像有名な舌を出したアインシュタインの顔が、何とも奇妙な形でモニュメントとして残されています。住宅街の一角にポツンと、あまりにもびっくりするような遭遇になると思います。
ウルム民俗祭り宣誓週間の1週間前に開催される民俗祭りです。シュヴァーベン地方の料理や、乗り物のアトラクションなどが多く設置され、お祭り前のウルム市民で溢れます。
宣誓週間毎年7月恒例のお祭り。宣誓週間という名の由来になっているのは、『誓いの月曜日』で、市長、市民が14世紀から伝わる伝統的な宣誓をすることにあります。そして、この祭りのクライマックスは、悠久のドナウの流れの中での何千人もの市民で行われる水上パレードです。ウルム中が興奮に包まれ、一際華やかな色彩に包まれるお祭りです。
クリスマスマーケット大聖堂広場で行われるドイツ各地で御馴染みのクリスマスマーケット。

 期待していてがっかりしたっていう街をよくききますが、ウルムはその逆。それほど期待していなかったけど、たくさんの発見があって楽しかったっていう感想がたくさん聞ける街かなって個人的には思います。1日中満喫できるおすすめの街です!