ロマンチック街道といえばローテンブルクが不動の人気観光地となっているが、同じロマンチック街道の名観光地として、このディンケルスビュールは欠かせない。
癒しの牧歌的な田園地帯にあり、水郷に囲まれた中世さながらの旧市街。重要な交通ルートから外れた為に大戦の戦災も免れ、ドイツの農村地帯の日常をそのまま感じることができるのが最大の魅力である。
また、毎年7月には有名な祭り、キンダーツェッヘが催されることでも知られる。
8世紀には集落はあったが、1130年頃のドイツ王位争いで、シュタウフェン家の防衛拠点とされたのが都市としての始まりである。その後14世紀頃の織物業の発達により、都市としての繁栄期を迎える。14世紀後半には市壁、15世紀には市門も全て完成、1499年には町の象徴であるゲオルク教会が完成し、現在に至る旧市街の大部分が出来上がった。そして、1632年の30年戦争の際には、スウェーデン軍によって包囲されて絶体絶命に陥るが、町の子供達の請いによって救われることとなる。以後は交通ルートから外れた為に衰退するが、これが逆に大戦の被害を免れることとなり、現在では中世の旧市街や貴重な防御設備を残した観光地となっている。
Data
帰属連邦州 | バイエルン州 |
人口 | 11,515人(2007年) |
街道 | ロマンチック街道 |
祭り | キンダーツェッヘ(毎年7月) |
郵便番号 | 91550 |
おすすめ度 | ☆☆☆☆☆ |
キャッチフレーズ | ドイツ農村風景のシンボル |
公式サイト | http://www.dinkelsbuehl.de/ |
Map
ドイツ南部のほぼ中央に位置し、バイエルン州とバーデン=ヴュルテンベルク州の境にある。旧市街の周りにはヴェルニッツ川が流れ、それによる水濠と、のどかな田園地帯が広がる。また、旧市街は北西に向かうにつれて標高が高くなる為、北西からは旧市街の綺麗な景色が望める。
Access
■ ローテンブルクからヨーロッパバスで約40分
■ フランクフルトからヨーロッパバスで約4時間
■ ネルトリンゲンからバスで約50分
■ ミュンヘンからRE/RB/BUSで約3時間半(若干本数)
アウクスブルク/ドナウヴェルト/ネルトリンゲン経由
バイエルンチケットを使用すると、週末と平日9時以降、普通電車(RE/RB)とバスであれば、5人まで有効で28ユーロで乗り放題です。1人でも20ユーロです。ただ、ミュンヘンからこれらの列車でいくには本数が少ないので気をつけてください。
ザザザザザ!!!!急にスコールが!キンダーツェッヘ観光を空振りして凹み気味の僕に、更に訪れた悲劇?!日頃の行いは良くないかもだけど、楽しみにしていたディンケルスビュール観光。まさかこんなことになろうとは・・・ダブルパンチじゃないか!
あわてて駆け込んだ聖ゲオルク教会の目の前のパン屋。外ではバケツをひっくり返したような雨が降っている。でも、7月の雨なのに、何だかすごく気持ち良い。それどころか、ディンケルスビュールの町そのものが水浴びを楽しんでいるような雰囲気さえ漂う。町が気持ちよさそうに見えるのだ。
7月の日本といえば、まさに梅雨の真っ只中。ムシムシとした嫌〜な空気の中、人も町ももううんざりって感じに見えるけど、ここドイツは違う。確かにドイツも1年で最も雨の多いのは7月だったりするけど、本当に気持ちのよい爽やかな雨なのだ。ドイツ人が傘をもたずに、雨に濡れても喜んでいる姿、何となく理解できるような気がした。
2時間前・・・。
僕はこの日、前々から楽しみにしていたディンケルスビュールの有名な子供祭り、『キンダーツェッヘ』を見に来たのだった。
1632年に町がスウェーデン軍に包囲されたとき、この町の子供が出てきて、涙ながらに慈悲を乞ったという。その姿に、故郷の我が子を思ったスウェーデン軍の司令官。攻撃をやめて、この町から立ち去ったという。
まるで童話のようなそんな話をテーマにした『キンダーツェッヘ』。はてさて、どんなイベントが繰り広げられるのか・・・なんてワクワクを募らせてやってきたところ・・・僕が見たのは何と、祭り支度をしている最中のディンケルスビュールだったのだ・・・。下調べ不足・・・誰かと一緒だったら・・・なんて思うと恐ろしい。
片道4時間近くかけて、やっとのことでミュンヘンからここディンケルスビュールに着いたのだが、祭りがないんじゃなんのために来たんだよ・・・なんて落胆したのだった。
ところが・・・
そんな僕をディンケルスビュールさんが見かねてか、次々と心動かすものを見せてくれるのだ!「ほらほら、せっかく来たんだからくつろいでいってくれなよ」とばかりに、旧市街が僕に素晴らしい風景を与えてくれるのだ。
まさに絵のような風景の中にある町。どっかの美術館にある、心打たれるような中世の風景画、あの中の世界に1回入ってみたいなぁ・・・なんて空想も頭に過ぎることがよくあるけど、「今入ってるじゃないか!!」・・・なんて錯覚さえ覚えるような町なのだ。
焦げ茶色の地面からたくさんの緑が生えている。その緑の間を、横一線に灰白色の市壁が走っている。そして、その市壁の中には、赤茶色の帽子を被った、たくさんの家々が並んでいる。まるで囲いの中で戯れるかのように・・・。僕はその中に紛れ込んだ人間。
晴天にあくびをするのんびりとしたディンケルスビュール・・・400年近く前に迎えた緊迫の場面・・・「そんなのとっくの昔の思い出だよ。」とでもいわんばかりに、プカプカとタバコをふかしている。そんな平穏な世界を目にしたのだった。
牧歌的な風景に心も和み、すっかり『キンダーツェッヘ』のことなんて忘れていた。そして2時間も経った頃、再びここ聖ゲオルク教会の目の前を通ったのだった。
すると、突然襲ってきた黒い雲から、滝のような雨が落ちてくる。そう、そんな激しい雨を逃れるようにして駆け込んだのが、聖ゲオルク教会前のパン屋だった。
でも、不思議なことに、目の前でスコールに打たれている家々を見ても、何だかまるでそれを欲していたかのように、楽しそうに嬉しそうに浴びているように見える。「ああ、気持ちいシャワーだ。」とばかりに。そう、いってみれば、この町に降り注ぐ雨は、家々があびるシャワー。
10分後。
すっかり汗を流した旧市街の町並みは、さっきとはまた違った爽やかな雰囲気で満ちていた。ワインマルクトに並ぶドイチェス・ハウスをはじめとした歴史的木組みの建物も、「あー、心地よかった・・・。」とばかりに露を振り払っていた。
最後に訪れたのは、北のヴェルニッツ門を出たところにある、ヴェルニッツ川と市壁に囲まれた中洲のようなところ。露が滴り落ちる緑の草花の向こうに、市壁に囲まれた旧市街が見える。遥か昔、ここを取り囲んだスウェーデン軍隊も、これに似たような風景を見たのだろうか。しかし・・・この町を目の前にして、本当に攻撃する気になったのだろうか・・・。
きっと・・・スウェーデン軍の将軍は、子供が泣いてすがり付いてきた時に、こう思ったに違いない。
「ああ、よかった・・・。」
って。攻撃しないで済んだって思ったに違いない。
-町の小窓たち- |
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詳細はフリー写真de小旅行Terminal〜ディンケルスビュール〜でご紹介中です。
キンダーツェッヘの旅行記にならなくてごめんなさい。悔しいというか、ただの馬鹿というか・・・でも、この町が守られたという事実の片鱗は見られたような気がしました。きっと軍も、この町は攻撃しちゃいけない・・・なんて思ったはず。平和な営みを破壊する罪深さ、それをはっきりと感じ取れる風景がそこにはあります。
市壁なんてただの石の塊。本当の防御力を生むのは、その中で暮らしている住人達の心と、それを感じる心なのかもしれません。
ディンケルスビュールは、個人的にはロマンチック街道で一番のオススメの町です!ルートが面倒なだけに、素晴らしい町なのに、なかなか足が向かないってところなのかもしれません。旧市街は変に観光地化された感じもなく、ドイツの素朴な中世農村風景が色濃く息づいています。癒しを求めるのであれば、きっと期待に応えてくれること間違いありません!是非行ってみてください。
旧市街全体 | これこそ見逃すべからずという有名スポットこそあまりないものの、旧市街全体が絵の中にあるような、本当に出来過ぎた美しい町です。旧市街には多くの塔が残り、ローテンブルク門、ヴェルニッツ門、ネルトリンガー門、ゼークリンガー門という4つの市門もしっかりと残されています。囲む市壁も美しく、中世からの防御壁としても貴重な遺産とされています。 中世の雰囲気がそのまま残された田舎町という雰囲気で、ここまで癒しを与えてくれるドイツの旧市街はなかなかないと思いますよ!水濠に田園に、非常に絵になる印象的な町です。 |
聖ゲオルク教会 | 1499年に完成した後期ゴシック様式の聖堂で、ディンケルスビュールの主教会です。後期ゴシックとしては、ミュンヘンのフラウエン教会に匹敵する美しさと評され、のどかなこの町にアクセントを与えています。高さは62mもあり、展望台からは旧市街全体を見渡すことができます。 |
ドイチェス・ハウス | 聖ゲオルク教会のすぐ近くには、美しい木組みの家が建ち並ぶワインマルクトという広場があります。ディンケルスビュールは特殊で、他の町にあるようなマルクト広場はなく、道路状のワインマルクトがその代わりをしています。そして、ここにある1440年頃に建てられたドイチェス・ハウスは、ロマンチック街道で最も綺麗な木組みの建造物といわれています。 |
アルテ・プロムナーデ | 旧市街の市壁の南に沿う散策路です。ディンケルスビュールのいかにも牧歌的な旧市街を見渡すことができ、数々の塔、囲む市壁、農村風景など、非常に絵画的で綺麗な風景が印象的です。 |
個人的にはかなりポイントが高い町です。のんびりとした田舎の日常生活が崩されない程度の観光地で、素直に綺麗な町だって印象が入ってくると思います。楽しむには少し要素が足りないかもしれないですが、絵画的な風景の中で癒しの時間を過ごしたい・・・という方には最高の町ですよ!
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