バイエルン州南部、ミュンヘンの約50キロ西にある小さな町。ヴュルツブルクからフュッセンまで続くロマンチック街道沿いの町で、ドイツでは『南バイエルンのローテンブルク』とも呼ばれている。
中世においては塩の道のルートとして栄え、現在旧市街に残るバイエルン門などは当時の繁栄の面影を残している。
魅力的な町が数多くあるロマンチック街道では影の薄い存在だが、中世遺産が数多く残る綺麗な町である。
文献上この町が確立され、発展を始めるのは12世紀になる。1158年に、ハインリヒ獅子侯によって「塩の道」がこの地に移され、以降城塞が築かれるなどして大いに発展を始める。
塩の道とは、中世にザルツブルクなどからとられた塩が各地へ運ばれる際の交易ルートのこと。塩が大変貴重なものとされた中世においては、この「塩の道」の宿場町であることにより、その関税などが大変富をもたらすことになる。
現在では、かつての塩の道の意義もなくなり、周辺のミュンヘンやアウクスブルクの影に隠れる小さな地方都市となってしまったが、逆にドイツの日常と中世の遺産が同時に見れる隠れ観光名所となっている。
Data
帰属連邦州 | バイエルン州 |
人口 | 27,568人(2007年) |
観光街道 | ロマンチック街道 |
お祭り | ルーテンフェスト (4年に1回/次回は2011年) |
郵便番号 | 86899 |
おすすめ度 | ☆☆☆ |
キャッチフレーズ | 南バイエルンのローテンブルク |
公式サイト | www.landsberg.de |
Map
ミュンヘンの西約55km、アウクスブルクの南約38kmの地点にある。旧市街に沿うようにレヒ川が流れ、東にはアマー湖もある、水の多い町でもある。旧市街は、東が高台、中心部は低地、西にはレヒ川があり、高低差が大きくなっている。
Access
■ ミュンヘンからRE/RBで約50分
(カウフェリンクでRBに乗換)
■ アウクスブルクからRBで約55分 (乗換なし)
■ フュッセンからRE/RBで約1時間35分
(カウフェリンクでRBに乗換)
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朝霜に凍える家。赤茶色の帽子をかぶった首がすくんでる。雲に覆われた空へ昇る息は白く、まるで凍り付いて動けなくなったみたい。
ある小国に、傲慢で残酷な王がいた。そんな王が好んで毎日していることがあった。
城を出て少しいくと、大きな森に行き当たる。馬の足音を敏感に感じ取った森が、ざわざわと慌しくなる。そして、その蹄の音が森の前で止まった瞬間、森は一気に静寂に包まれるのだ。そして、再び馬は森の中へと進み始める。まるで死んだように黙り込む樹々。しかし、そんな中、びくびくと怯える影が木立の中に身をかがめるのをこの列は決して逃さない。
次の瞬間、森は一気に戦場と化す。しかし、一方はただただ必至に逃げるだけ、一方的に追い詰められるだけ。そうして行き着いた森の奥には、横一線に流れる川があった。その川岸の手前には、震える小鹿たちの姿があった。そして、その潤んだ目に映るのは、冷酷な笑いを浮かべる人間たちの姿だったのだ。
森を出てくる王の一行。高々と笑いをあげて城へと戻る道。その一隊にあるはずの姿がない。生けるものの宿命だと目を瞑るはずのシーンは、この一隊にとってのただの娯楽の一場面でしかなかったのだ。蹄の跡を辿って行ったなら、川の手前に何があるかは想像できる。せめてもこの町の人間が生きるために身を捧げるのならまだ救われるものを・・・そんな無念の表情に倒れた小鹿の姿があった。
その王の目は、動物ばかりに向けられるものではなかった。ある日、王の一行がいつものように森から城へと帰るとき、町外れにあるひとつの古い小屋が目に留まった。ここには老夫婦が住み、その家はもはや目も当てられないくらいに痛んでいたが、これを目の前にして王はこう言った。
「焼き払ってしまえ!」
泣いて請う老夫婦を馬上から見下ろし、空に昇る黒煙に笑みを浮かべながら自らの居城へと向かっていった。
この国が王の手によって建てられる以前には、この地には廃屋といわんばかりの多くの民家が立ち並んでいた。必至に請うその住人たちの願いをよそに、その全ての家を焼き払い、こうして今ある町ができあがったのだった。ただ、こうしてまだ焼け残って補修された家がある。以前この地に住み、その愛した土地を奪われてもまだこの地で生きてゆきたい、という老人がいるのだった。そういった老人達は、焼け残った家を何とか繕ってこうしてひっそりと怯えるように生き延びている、それが現状だった。
この日、またも2人の老夫婦の家が失われた。そこに形あったものは、黒い煙となって虚しく空へと消えていくのだった。
そんなある日の夕刻、事が起こった。町外れのある若者が、狩りから戻る王の列の前を立ち阻んだのである。
「王様!私たちはこの国の住人です。王と同じ様に、この土地を愛する1人の人間です。そして、見るも醜くも、あれらの家は私たちを守ってくれる、私たちを支えてくれるものなんです!国民を、私たちを守ってくれるはずの王様にならそれがわかるでしょう!」
ふと見ると、路傍に小さくうずくまる老夫婦が見えた。そしてその後ろには、亡霊のように朽ち果てた多くの家々が並んでいた。
「やかましい!黙れ!焼き払え!」
王は声を荒げた。すると、その声と同時に、その朽ち果てた家々の陰から次々と住民が姿を現し、王の一隊を取り囲んだのだ!もう我慢できない。もうこんな横暴にうずくまって生きる理由はない!しかし、まだできたばかりの新しい家々に住む人間は、誰一人とて出てこなかった。見て見ぬふりをしているようだった。集まってくるのはかつてからこの地に土着していた老人とその家族ばかりだった。
しかし、この騒ぎを聞きつけた城兵たちがすぐさま駆けつけた。弓矢を振りかざし老人たちの背後に迫る。甲冑の軍勢には老人たちの力など無に等しい。王を取り囲んでいた住民たちの輪は解け、じりじりと次第に町の外へ追いやられていった。
その時、王の心に何か湧き上がるものがあった。そう、これは毎日の光景。森の中に動物を追い詰めるときのあの快感。川の淵まで追いやり、恐怖に引きつるあの目を見るときの感覚。そして、それは王に付き添う多くの兵士達にも言えたことだった。王の下で悠々自適に暮らす彼らには、もう既にこの住民達の切実な声などは少しも耳に入らなかったのだ。多くの兵に取り囲まれ、その向こうには炎に包まれる自分たちの家。もう老人たちには逃げることしかできなかった。
闇の世界・・・背後に流れの音が聞こえた。右手には真っ黒い壁のような山影がある。もう逃げ場はなかった。弓を引く王と兵士達。老人たちは目を覆った。
・・・・・・
弓を引いた手が下りた。辺りを見回す兵士達。何が起こったのか・・・老人たちは忽然と姿を消していた。彼らのいたはずの川っ縁に駆け寄ると、水面の月だけがゆらゆらと揺れているのが見えた。それでも、さして気にも留めなかった。もう彼らには現実世界に見えているもの全てが幻想だったのだろう。心を奪われた人間の目に映るものは、もはや自分達が引き起こした魔力の世界にすら映っていたのだった。ついに自分達は魔力をも手にし、それで奴らを消し去ったに違いないという狂気が、逆に彼ら自身の狂喜を呼んだのだった。
「この町には醜いものなどいらんのだ。あんな亡霊屋敷なんぞ住むに値しない。要らなくなったものは捨てる。ゴミは燃やして処分するのが当然だ。」
王はそう呟き、高笑いして来た道を戻り始めたのだった。
川の流れが聞こえる。川面に煌く陽の光で目が覚めた。
「ここは・・・」
「起きたかい・・・?」
回りにはたくさんの老人達が寝かされていた。そうだ・・・確か、王に森の奥まで追いかけられて、最後・・・
「お前さんたちどうしたんじゃ。対岸から流されてきたようじゃが・・・」
若者の目の前には、見たこともない老婆が立っていた。こんなおばあさん、私たちの町にいただろうか・・・。
・・・・・・
「そうだったのか・・・」
老人たちは一斉に呟いた。どうやら昨日の夜、王達に追いかけられた自分達は川に落ち、そのまま対岸にあるこの一軒屋の畔まで流されてきたらしい。そして、その川辺に流れ着いた全員を引き上げて救ってくれたのが、この家のお婆さんだったというのだ。
「しかし、もう住む家もない・・・。どっちにしたって、もうわしらはすぐに死ぬ運命なんじゃ・・・」1人の老人が呟いた。
「何いっとるんじゃ。見てみい。あんたらが流されてきた方向、あそこにたくさん家があるじゃないか。あそこは元々わしらの国の民が住んでいて、今はもう誰も住んでいないから、お前さんたちが住め。舟を貸してやるから、あんたらで自由に使いな。」
老婆の指の先に目をやると、何と川の対岸の森の中に、たくさんの赤茶色の屋根の家が集まっていた。
・・・・・・
「こんな森の中にこんな村があったのか!」
舟で無事に森の村へと送り届けられた多くの老人とその家族たち。その目には希望が溢れていた。
「ここは自由に使って良いぞ。ただひとつ!森の外だけは絶対にでちゃいかんぞ。もうあんたらの国の王もここに来ることはないから安心して暮らしな。」老婆はそう言い残して、また対岸へと戻っていった。
しかし、老人たちには全てが府に落ちないことばかりだった。確かにこの森は昨日の夜追われて迷い込んだ森のはず。でも、あの時にはこんな家、ましてやこんな村ともいえるようなところなどなかったはず。それに、あの老婆が最後に言い残した言葉。王はもうここには来ない・・・。川辺にうちあげられた自分達をたった1人の彼女がどう救えたのか・・・。それに・・・そうなら濡れているはずの服。何も感じない。
それでも、住む家を得た彼らには、何を思い巡らすよりも、自分が今生きていること、そしてこの先の生活を守ってくれるこの場所を手に入れたことが何よりも幸せだった。新しい生活の希望に包まれ、不可思議な出来事など現実の喜びにすっかり消えてなくなっていた。
それから数百年。レヒ川の畔、高台の下に、ランツベルクという小さな町がある。
その川の対岸の畔にぽつんと町を眺めるように立つ塔がある。黄色の屋根と緑の屋根がメルヘンチックな石造りの塔。
ここにはかつて一軒の家が建っており、1人の老婆が住んでいたという。
そして、この塔の一番上の窓際に、不思議な落書きがある。
「人を守る意味がわかるまでその格好でいるがいい。私はあんたらをここからずっと見張っている。」
※この物語はフィクションです。
全て読んで下さった方、本当にありがとうございました!途中で飽きてやめてしまうような緊迫感のない文章、素人として泣けてきます・・・。どなたか弟子にして下さい!文章書くのが好きなのに、思う様なものが書けなくて歯がゆいです。でも、本当にありがとうございました。
愚痴はこれくらいにして、この話についてですが、これは全くのフィクションです。ですが、最後の塔は実際にあるムッター塔を表しています。
私がランツベルクを旅したとき、高台の上から見た家々が何だか凍えて動けなくなった生き物のように見えちゃいました。そして、そんな家々を遥か向こうからムッター塔が見つめている・・・この光景が、この物語を書くきっかけになりました。それに現在の社会情勢などを盛り込んだり、最後はちょっとドイツ風にブラックに終わらせてみた感じです。
こんな素人のお話にお付き合いいただき本当にありがとうございましたm(__)m
ランツベルクはドイツで、南バイエルンのローテンブルクとまで呼ばれているようですが、そこまでのインパクトはないものの、旅行するだけの価値のある町だと思います。ただ、観光地として整備があまりなされていないので、観光地に来たという感覚はあまり味わえないと思います。それでも、町を囲む市壁や門の数々、綺麗な街並みや教会、水辺の景色など、落ち着いて見てまわれるのも魅力だと思います。観光地観光地したところが好みでない方には特におすすめの町です。
バイエルン門 | 旧市街の市壁の東端、丘を登った先に構えるバイエルン門ですが、この門は南ドイツで最も美しい門だと言われています。1425年に建てられ、カラフルに塗られた外観はなかなかインパクトがあります。かつてはミュンヘンとランツベルク間の塩の道の関所として交通管理をしていた場所でもあります。また、この日は上ることはできませんでしたが、高さ36m、しかも高台にあるこの門の上からは、ランツベルクのたいへん綺麗なパノラマが見られるようです。 |
ムッター塔 | レヒ川の畔にある19世紀建造の塔です。旧市街の対岸にあり、黄色い屋根が印象的なたいへんメルヘンチックな塔です。この塔は地元のハーコマーという画家が建てたもので、内部は彼自身の美術館として公開されています。ちなみに、この日はたまたま結婚式の新郎新婦が記念写真を撮っているところを見ることができました。すごくロマンチックでした。 |
マリア教会 | 1488年に完成したランツベルクの主教会で、現在のバロック様式に改築されたのは1700年のことです。また、内部には15〜16世紀頃に作られたたいへん綺麗なステンドグラスがあります。 |
ハウプト広場 | カラフルな建物が立ち並ぶランツベルクの中心です。広場の中央には1783年に建てられたマリエン像の噴水があり、広場の西には1702年建造のランツベルク市庁舎もあります。また、広場の東側には13世紀に建てられたというシュマルツ塔もあります。 |
市壁と門 | ランツベルクには、高台の上から低地にある旧市街まで、かなりの範囲を現在も市壁が囲んでいます。これだけ高低差のある町の高台の市壁は珍しいです。また、その市壁沿いや旧市街内部には数々の門や門塔がありますので、探してみてください。本当にあちらこちらにありますので、門塔めぐりの観光もなかなか楽しめると思います。 |
隠れ観光名所と言われるのも頷けると思います。あちらこちらにガイドに書かれていないような見所が点在するので、宝探し感覚で楽しめる町だと思いますよ。
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