ドレスデンからエルベ川を下り、チェコとの国境付近に広がる奇岩と絶壁の山岳地帯ザクセン・スイス。ドイツでも唯一無二の自然の壮大な風景が広がり、どこか東洋を感じさせるような景勝地でもある。
この印象的な風景が広がるザクセン・スイス国立公園周辺にはケーニッヒシュタイン要塞やバスタイ橋といった観光名所も点在し、自然とのふれ合いに多くの観光客が訪れる。
ザクセンスイスという名称は、この地に移住したスイスの芸術家が、その風光明媚な景色が故郷に似ていると言ったことに由来する。この景勝が形成されたのは、約6000年前の地殻変動。エルベ川の浸食や隆起により、現在の様な姿となった。そして中世には塩や銀、コバルト等の産地にもなり、それがドレスデンに代表されるザクセンの華麗なバロック文化の財源となる。一方で1241年には240mという崖上にケーニッヒシュタイン城塞、ラーテンという町では、1851年に100〜200mという断崖にバスタイ橋という石橋が架けられ、これらは大きな観光名所となっている。また、19世紀以来、ハイカーや登山家の間でも大変な人気となっている。
Data
帰属連邦州 | ザクセン州 |
代表的な町 | ラーテン(バスタイ橋) |
ケーニヒシュタイン (難攻不落の崖上の要塞) | |
バート・シャンダウ (温泉保養地) | |
ピルナ(地域最大都市) | |
おすすめ度 | ☆☆☆☆☆ |
キャッチフレーズ | エルベの奇岩奇峰 |
公式観光サイト | www.saechsische-schweiz.de/ |
Map
ドイツ最東部、ザクセン州南部とチェコとの国境地帯に広がる。ドレスデンからエルベ川沿いに20km〜50km程度離れた所にあり、エルベ川の両端に切立つように奇岩奇峰が並ぶ。尚、山地の最高峰はフィヒテルベルク山で1240m、平均標高は約700mである。
Access
■ ドレスデン〜バート・シャンダウ Sバーンで約55分
■ ドレスデン〜ラーテン Sバーンで約40分
■ ドレスデン〜ケーニヒシュタイン Sバーンで約45分
■ ドレスデン〜ピルナ Sバーンで約30分
ザクセンチケットを使用すれば、ザクセン州/テューリンゲン州/ザクセン・アンハルト州内について、週末と平日9時以降、ICE/IC以外であれば5人まで有効で28ユーロで乗り放題ですので大変お得です!
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なだらかな丘陵、延々と広がる平原、鬱蒼と茂る森、悠々と流れる河川。ドイツを象徴する自然の風景って、はじめはこんな印象だった。でも、そんなおおらかなバイエルンの人たちを重ね合わせるように見えていたドイツの雄大な景色は、ドイツに留学して数ヶ月、酷寒の北ドイツバルト海の荒波を見たり、ハルツ山地の濃霧に消えゆく魔女伝説の幻影を目に浮かべたりしているうちに、次第にグリム童話に象徴される恐ろしいイメージへと変わりつつあった。
自然の中を進んでいく列車に揺られていると、今尚手付かずに残されている風景に心が温まったりもするが、時に妙に不気味な感覚に襲われることもある。なんだかな。冬のドイツってやっぱり暗い。暖かい季節とのコントラストがここまではっきりしている自然って、僕自身はそれまで経験したことがなかった。だからこそ車窓の彼方に教会の尖塔が見えてきたり、赤茶色の屋根が見えてきたりしたら、まるで砂漠のオアシスに出逢ったかのような(これも想像でしかないですが・・・)気持ちになったもんだ。
僕がザクセン・スイスに訪れたのは、2007年の2月。ドレスデンからお隣チェコのプラハに向かう途中の寄り道だった。エルベ川のフィレンツェと呼ばれたドレスデンは、ドイツでも屈指の宮廷文化が栄えた華麗な都。かつてこのエルベ川を下った中世人も、ザクセン・スイスの山岳地帯からドレスデンが見えてきた瞬間、オアシスにたどり着いたような感覚になったんじゃないかな・・・なんて勝手にイメージする。
逆に、そんなドレスデンを離れて、まだ上流に何があるか未知だった中世人がザクセン・スイスに入ってきたならば、そこは冥界の入口にすら思えたかもしれない。何せエルベ川の両岸にはしだいに切立った岩山が現れ始め、壁のように川を閉じ込め、そして見知らぬ国へ続いているのだから。まるで川の上流には堅く閉ざされた巨大の石の門が構え、岩山という番兵が左右で目を光らせる。エルベ川を上るというのは、そんな魔王の城にでも向かっているかのような・・・いや、昔ハマったゲームを思い出してしまいました。。。ちょっと大げさな表現だけど、なんだかとてつもなく凄い世界がこの川の向こうにあるんじゃないかって思わせるような、そんなプロローグを創ってくれているのが、このザクセン・スイスなのだ。
ちょっと脇道にそれ過ぎたが、実際現在は、もちろんそのエルベ川に沿うようにして鉄道が走っている。流れる水とは逆行して進む車窓からは、その雄大な川の流れが一層速く見える。ドレスデンから約30分、ピルナという町に着く。ザクセン・スイスの玄関口と言われるこの町では、早速岸壁の上にゾンネンシュタイン城という城塞が僕たちの列車を見下ろしていた。
なだらかに蛇行するエルベ川に沿って列車は進む。そして更に10分ほど進むと、川岸にたたずむ赤茶色の家々が見えてきた。どうしてこんなところに家を構えたのだろう・・・そんな印象すら受けた直後、ラーテンというアナウンスが流れた。
観光地と呼ぶには寂れた駅舎。真冬の曇り空が、観光気分をそっくり奪い去る。華やかなドレスデンとはまるで対照的な駅前に、文字通り何だか気分も晴れない。エルベ川のほとりに向かって少し進む。・・・すると、そこには川岸に横付けされた渡し舟が、列車を降りてそこに向かう観光客達を待っていてくれたのだ!曇り空から観光気分を取り返した瞬間だった。
対岸にはかろうじて観光地らしい装いをした集落が広がっていた。そこは、エルベに揺られて5分、いよいよザクセン・スイス一帯を一望できる観光名所、バスタイ橋のある岩山への入口だった。そして、細い登山道の入口付近では、冬なのにタオルを片手に何だか達成感を得たような晴れ晴れしい観光客の数々。今下山したばかりなのだろう、重装備をしたおっさんから普段着の子供まで、体から湯気をあげるドイツ人の観光客たちがおいしそうにドリンクをごくごくと飲み干していた。
日本でも何度か登山経験はある。湿っていて足元が滑りやすい他は、そこまで危険な道ではない。でもやはり険しい山道は侮れない。ものの10分ほどで息も上がり、点在するビューポイントでエルベ川を見下ろす。エルベに切立つ岩の上にいる実感、でも木陰から覗く景色はそこまで感動を伴うものでもなかった。
登り続けて1時間も経ったか経たないか・・・頭上で歓声が聞こえた。いよいよあとひと登りでその場所がある!
数分後・・・大ガチョウ岩は、口をあんぐりと開けて絶景に圧倒されるアジア人を見たことだろう・・・。空という海に架かるバスタイ橋、空という海に頭を出すガチョウ岩、岩で作られた城砦「ノイラーテン」・・・そこを大海原に例えたら、海面から顔を出したようなそれらのスポットの数々が、とても筆舌に尽くしがたいような景色を創りだしていた。
「・・・・・・!!!」
言葉にならないような絶景。まさに圧倒される凄みのある景色だった。こんな素人の旅行記ではとても表現できないような世界、作家の方々はどう表すだろう・・・何だかすごくもどかしい。とりあえず、分かり易いようにこう書いておこう。「ドイツ最高峰のツークシュピッツェの頂よりも印象に残る絶景だった。」
ドイツには、町や建造物を伴う絶景はたくさんある。ハイデルベルクやノイシュヴァンシュタイン城、ケルン大聖堂等など挙げればきりがない。でも、そこから自然だけを取り出してみたら、果たしてそんな印象に残る景色だろうか。このバスタイ橋も建造物ではあるが、それは大自然の景勝の一部。不思議と全く違和感のない、ザクセン・スイスに溶け込んだ建造物。でも、たとえそのバスタイ橋を取り除いたとしても、そこにはそこを訪れた人の心にいつまでも刻まれる絶景がある。
それから1時間後、僕はきっと晴れ晴れとした表情で汗をぬぐっていたと思う。エルベ川の渡し舟から感じる風は身を凍らせるような冷たさだったが、暖かい季節だったらきっと爽やかに汗を乾かしてくれただろう。
さて・・・いよいよ、このエルベ川を上り、未知の世界へ向かう。ザクセン・スイスを抜け、赤茶色の屋根がたくさん存在するであろうオアシス、チェコの首都プラハへ向かう。
ザクセン・スイスというのは周辺の山岳地帯一帯を指していますが、ここでは私が訪れたバスタイ橋を中心にご紹介しました。そのような意味では偏った表現になってしまっているかもしれませんが、そこはご了承ください。
さて、ドレスデンとプラハという華麗な大都市を結ぶルートにあるザクセン・スイス。その自然の大景勝はとても文字で表現できるものではないと思います。正直私は、ドイツにこんな景色があったとは想像もしていませんでした。メルヘンの中世旅行が決まり文句のドイツですので、特に何ヶ月も留学をしているような方にとっては、その素晴らしい自然は印象に残ると思います。
日本は世界でも誇れるような世界の自然風景が数多く存在しますが、ドイツは自然の名所は少ないです。旅行記のように、雄大な自然が心にゆとりを与えてくれる景色は多いですが、このように圧倒される景色は少ないので、貴重な存在であるザクセン・スイスは是非訪れるべきところですよ!
町というよりはこの地域一帯の見所ですが、ドレスデンから出ているSバーンに乗っていけば有名な観光スポットはだいたい行くことができます。見所は絶壁の奇峰の連なる迫力ある風景ですが、その岩山に登ればもっと感動する絶景を目にすることができますよ。下に挙げるのは、ドレスデンからSバーンで行ける範囲のザクセン・スイスの主な見所です。
バスタイ橋 | 旅行記でもご紹介している、ケーニヒシュタイン要塞とともにザクセン・スイスの2大スポットのひとつです。ラーテンという小さな温泉街にある奇峰の石橋で、高さ200mというところに架かる信じがたいような光景を作り出しています。麓からそこに至るまでの山道は険しく疲れますが、たどり着いたときの爽快感と圧倒される絶景には感動するはずです!是非行ってみてください! |
ケーニヒシュタイン要塞 | ドレスデンから約45分のケーニヒシュタイン駅から、歩いて45分かかる標高361mの絶壁に建つ要塞です。13世紀に難攻不落の砦として築かれ、その歴史の重みと絶景を同時に味わうことのできる最高のスポットです。また、ここは中世の牢獄や大戦時の捕虜収容所としても使われていました。現在では博物館として公開されています。バスタイ橋を上回る最高のスポットしての呼び声が高く、チェコのボヘミア山地までも一望できるという素晴らしい観光名所となっています。 |
リーリエンシュタイン山 | ここはスポットというよりは、バスタイ橋やケーニッヒシュタインから望むことのできる、ザクセン・スイスでも特徴のある山です。テーブル状の珍しい山です。 |
ゾンネンシュタイン城 | ザクセン・スイスの玄関口ともいえる、ドレスデンから30分ほどのピルナという町の高台にある城です。電車で通り過ぎたとしても、山の上に築かれた迫力ある城の様子を眺めることもできるので、ラーテンやケーニヒシュタインに行くだけという方でも、ピルナが近づいてきたら車窓から眺める風景に注目してみてください! |
エルベ川 | 19世紀まで西欧と東欧の境とされてきた国際河川エルベ川ですが、この川はポーランドとチェコの国境に端を発し、ザクセン・スイスを通ってドレスデン、マイセン、そして遠くハンブルク港へと流れていきます。ドイツを代表する河川のひとつですが、ザクセン・スイスの断崖絶壁を生みだしたのも、このエルベ川の浸食があったからです。ラーテンなどではエルベ川の渡し舟などにも乗れますので、その雄大な流れを感じてみてください。 |
ドイツには自然の景勝地というのは多くありません。中世メルヘンの町並みに注目することの多いドイツですが、アルプスやハルツ山地、そしてこのザクセン・スイスなどの自然も満喫してみてください!
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